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「潤い×おでかけ」 触ると「美人になれる」とウワサの石碑に触ってきた

2016.04.26

春はおでかけが楽しい季節。色とりどりの花や新緑も美しく、お散歩するのもとても気持ちがよいですね。

春のうららかな陽気に誘われて向かったのは、江戸の伝統文化を色濃く残す東京・両国の「回向院(えこういん)」。 実はこのお寺には、「触ると美人になる」とひそかにウワサされている石碑があるんです。 それが、江戸時代の浮世絵師、鳥居清長(とりいきよなが)の美人画をモチーフにしたという「鳥居清長碑」。 美しいものを見ると、心もうるおいそうですよね! 実際に行って触ってきました。

回向院は江戸大相撲文化の発祥地だった

回向院

両国といえば相撲を思い浮かべますよね。でも、江戸大相撲の発祥地が「回向院」というお寺だったことを知っている人はあまり多くないかもしれません。

「昔は回向院の敷地内に国技館があって、お相撲をしていたんです。当時を描いた浮世絵もたくさん残っているんですよ」 そう教えてくれたのは、回向院の副住職である本多将敬さん。江戸大相撲がおこなわれていたのは、江戸後期から明治末期にかけての頃だそうです。

もともと回向院は明暦3(1657)年に起きた「明暦の大火」の犠牲者を供養するために開かれたのがはじまり。 境内には時代劇でおなじみのねずみ小僧のお墓もあり、受験生に大人気! というのも長年捕まらなかった運にあやかろうと、墓石を削ってお守りにする風習があるんです。

美人画の碑を触り、心が清らかに

鳥居清長碑
回向院にある鳥居清長碑

江戸時代の浮世絵師、鳥居清長もここに眠っています。今回のお目当てである「鳥居清長碑」は実は清長のお墓。 といっても、もともとのお墓はすでになく、この碑は清長の没後200年を記念して平成25(2015)年に再建されたものです。


「清長さんって、写楽や北斎、広重と並んで六大浮世絵師といわれますが、作品がほとんど日本にないんですよ。 とくに美人画はあまりにも素敵すぎて、海外に流出してしまっているんです。日本での知名度がいまひとつなのは、そのせいかもしれません」と本多さん。

清長といえば、「美人画」が有名。彼が描くやわらかな曲線の八頭身美人は、優美でさわやかな香気をまとい、"東洋のヴィーナス"と称されることも。女性の私が見てもうっとりします。

鳥居清長「大川端 夕涼みの図」 公益財団法人 平木浮世絵財団 所蔵
鳥居清長碑の原画となった鳥居清長「大川端 夕涼みの図」(公益財団法人 平木浮世絵財団 所蔵)

石碑に取り付けられたブロンズプレートには、清長の美人画「大川端の夕涼み」をモチーフにした女性が彫られています。 ちょうど石碑が完成したのが、回向院での善光寺の出開帳のときだったので、 お墓への開眼(魂入れ)は、長野市の善光寺大本願の鷹司誓玉(たかつかさせいぎょく)様にお願いしたそうです。

「"仏作って魂入れず"という言葉がありますが、お墓も同じで、魂をいれて初めて石ではなくお墓になるんですよね。 その魂を入れてくださったのが鷹司誓玉御前様。女性の鏡ともいえるような素敵な尼僧様です」

"碑に彫られた美人画の顔をなでると美人になる"というウワサについても聞いてみると、特に由来があるわけではなく、いわば自然発生的に生まれてきたものだとか。

「美人になるかどうかはわかりませんが、触ることで、鷹司誓玉御前様のように心が清らかになってくれたらいいなと思います。 絵画やお花もそうですが、素敵なものに触れると自然に笑顔になるでしょう。その笑顔こそ、本物の美しさではないかと思うのです」

本多さんの言葉に促されるように、私もそっと手を合わせ、美人画に触ると、なんだか心が洗われたような清々しい気持ちになりました。

 

 

スワロフスキーの回廊にうっとり

回向院の念珠
念珠には1本につき1つ、親玉とよばれる大きなガラス玉があり、親玉には回向院にいる御仏様が彫り込まれている

敷地内の「念仏堂」も見逃せません。こちらは日本画家の千住博氏による障壁画や石踊達哉氏による天井画など、 現代の美に彩られた空間。天空の竹林の中には108個のスワロフスキーが連なる数珠柱が50本以上もあり、なんとも神々しい眺めを作り出しています。

「この"念仏回廊"は浄土の回廊を表していて、本堂へいざなう道として作りました。朝日や夕日が当たると、レインボーがあちこちにできて本当にきれいですよ」

 

 

文豪も愛した老舗のくず餅

船橋屋 亀戸天神前本店。のれんの「船橋屋」は、作家 吉川英治の書

美しいものを見て心がうるおったら、なんだかお腹が空いてきました。 続いて訪れたのは、江戸時代から続く創業200年以上の老舗「船橋屋 亀戸天神前本店」。 看板メニューの「くず餅」は、古くは芥川龍之介や永井荷風、西郷隆盛などにも愛されてきた逸品です。

ちなみに、関東と関西では「くず餅」の定義が違うのをご存じですか? 関西流の原料は葛粉。関東流の原料は小麦澱粉を乳酸発酵させたもので、まったく別モノ。船橋屋は関東流です。

「くず餅は本店に隣接した工場で毎日手作り。原料は450日発酵させた小麦澱粉と水だけ。シンプルゆえに難しく、 お湯の量や蒸す温度を微調整してもちもちした仕上がりを一定に保つのは、熟練の職人こそがなせる技なんです」と、 株式会社船橋屋で広報を担当されている青木優海さんが教えてくださいました。くず餅職人は全員で10~12人おり、なかにはこの道50年のベテランもいるそうです。

 

 

「くず餅」は罪悪感ゼロ!?で食べられるヘルシーおやつ

船橋屋のくず餅とよしの餅
船橋屋の「くず餅」(570円税込/右手前)、イートイン限定メニュー「よしの餅」(570円税込/左奥)

本店にはイートインスペースもあり、黒蜜ときな粉でいただく定番の「くず餅」のほかに、 くず餅にこしあんと黒蜜をのせたイートイン限定メニュー「よしの餅」などもあります。

くず餅は適度にやわらかく、しなやかな弾力があり、発酵由来の香りもほどよく後を引きます。 黒蜜は濃厚でコクがあるのにくどくなく、香ばしい粗挽きのきな粉との相性も抜群。それでいて一人前194kcalと低カロリー。 さらに腹持ちがよいのに胃にもたれないのも嬉しいところ。和菓子で唯一の発酵食品でもあり、食べても罪悪感ゼロ!?のヘルシーなおやつです。 4月下旬ごろには店頭にある藤の花も見ごろを迎えるそうですよ。

美しいものを見て心がうるおい、やさしいおやつで身体もほっこり。おでかけシーズンの春は、ぜひ美しいものを見て心がうるおうスポットにでかけてみませんか?

 

 

取材協力
回向院
船橋屋

Text:Emiko Furuya