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東京お仕事女子が一転、群馬で農家の嫁に!忙しい毎日の中で得た、ホンモノの潤いとは?

2015.10.09
農家に嫁いだ星野美樹さんは、東京での会社員時代以上に忙しい毎日を送ることになりました。でも、実はそこには、多忙な毎日だからこそ手に入る「潤いのある暮らし」があったのです。
獲れたてのレタスを両手に持った笑顔の星野美樹さん

朝5:30起床、家事と仕事で多忙な毎日

東京で働く会社員から、群馬県昭和村のレタス農家に嫁いで2年。星野美樹さんの1日は、ごはんの準備から始まります。毎朝5:30に起床し、朝食準備。犬3匹、猫2匹にごはんをあげて、家中の窓を開け、仏壇にお水とお茶をあげます。後片付け、掃除、洗濯などの家事をしていると、あっという間に8:00の始業時間に。

美樹さんの1日のスケジュールを見てみると、仕事と家事に追われ、自分の時間はほとんどないのがわかります。

5:30  起床
     朝食(ごはん、お味噌汁、野菜、魚かたまご料理など)
     掃除、洗濯などの家事
8:00  事務仕事(社員の給料管理やSNSの更新など)
10:00  畑でお茶休憩
10:30  昼食用の野菜を畑で調達
11:00  昼食準備(社員のまかないを担当。7〜8人分。多いときは10人分くらい)
12:00  昼食
13:00  休憩
13:30  事務仕事、打ち合わせ、外出、街で買い出しなど
17:00  家事
18:30  夕食、メールチェック、残務処理など
0:00  就寝

会社の事務室でパソコンに向かい事務作業をする星野美樹さん
事務仕事では、会社員時代に培ったスキルが活きているそう。畑に足を運ぶことも多いので、下半身はモンペ&長靴姿。ご主人・お義父さん・犬2匹・猫2匹に加え、同じ敷地内には海外からの外国人実習生2人も暮らしています

美樹さんが嫁いだ農家は法人化しているので事務仕事がメインですが、レタスの収穫がピークを迎える時期は3:30から畑に出ることも。そして定休日はなく、家の隣が会社で仕事場なので、気持ち的にはお休みはないそう。

「もっと寝ていたいと思うことはないですか」と聞くと、「みんなが朝早くから頑張っているのに、自分だけ休むのは悪くて。他の農家のお嫁さんはもっと忙しいと思うし」と笑顔。いったいなぜ、こんなに頑張れるのでしょうか?

結婚後、「私は社会の役に立っているの?」と不安に

農園星ノ環のレタス畑
美樹さんが嫁いだ「農園星ノ環」は、群馬県利根郡昭和村の標高約750mの地にあります。冬はマイナス十数度になる厳しい環境。家の周りだけでも東京ドーム約1個分の農地を所有しており、レタスや小松菜、ほうれん草やトウモロコシなど季節に合わせた路地野菜を栽培しています

今でこそ、「充実度は100%」と語る美樹さんですが、嫁いだ当初は落ち込むことが多かったようです。「当初は専業主婦で、家事だけをしていました。洗濯と料理で1日が過ぎていき、"私は社会の役に立っているのかな"と、自分の存在意義を見出せずにいたんです」。

東京の会社員時代は、航空会社の関連商社で商品企画や社長秘書、広報宣伝部などに携わった美樹さん。元々社交的な性格で、社外活動にも積極的に参加し公私ともに充実した生活を送っていたため、突然社会とのつながりを断たれポツンと取り残されたような気持ちになってしまったのです。

■手料理を食べてくれる人がいる、という幸せ

昼食には星野美樹さんが作る料理を食べる美樹さんと夫、社員のみなさんたち
昼食は美樹さんが作る野菜中心のメニュー。料理に使う野菜はまかない用の畑で作ったものが中心。社員のみなさんたちと一緒に食卓を囲む
籠いっぱいの野菜
まかない用の畑でつくった野菜。取材した時季はナスがいっぱい獲れました!

嫁いでからしばらくは、自分の居場所を模索する日々が続きました。社員の人たちとは、毎月の懇親会や社員旅行、農作業の合間のお茶の時間など一緒にいる時間を持つようにし、引越しして約半年くらい経った農閑期に結婚式を畑で行った際には、村や地域の人に準備を手伝ってもらったりしました。結婚式には村の人やそれぞれの友人たちなど約480人もの人に来てもらったそうです。そして、会社員時代に培ったビジネススキルを活かして、Facebookやブログ、季刊誌などで会社の情報を発信したりと、自分の出来ることでさまざまな関わりを作っていきました。

お茶の時間に社員のみなさんと談笑する星野美樹さん
農作業中のお茶休憩時間にトラックの陰で一服。76歳の大ベテランスタッフや叔母さんは、わからないことを教えてくれるよき相談相手。美樹さんは、外国人実習生から「お母さん」と呼ばれています

そうした日々を送るうちに、美樹さんはそれまで見えていなかった幸せに気がつきました。毎日目にする、標高750mの地に広がる雄大な景色、作った料理を「おいしい!」と言って食べてくれる社員の人たちや家族、味噌や梅干しを作って食す丁寧な暮らし方......。

「東京の会社員時代は忙しくてお昼には机でカップラーメンを食べたりもしていたけど、今は違います。新鮮な野菜や、温かい仲間に囲まれて、贅沢な時間を過ごしています」。こうして美樹さんは、持ち前の明るさと行動力で、新たな環境に着実に根を張っていったのです。

夫の事業を支えながら「農業の素晴らしさを伝えたい」

年季の入ったトラクターの前で星野美樹さんとご主人の高章さん
高章さんに、美樹さんの農家の嫁としての頑張りぶりを聞くと、「料理や事務作業、地域とのつながりなど、とても頑張ってくれています。評価するのもおこがましいです」とのこと。う~ん、いいご夫婦です!

ご主人である高章さんとは、夢を聴衆に語る「ドリームプラン・プレゼンテーション」で出会いました。日本の農業の現状と課題を訴える高章さんのプレゼンを、スタッフとして参加していた美樹さんが聞き、「素敵なプレゼンだな」と思ったのがきっかけだそう。

高章さんは、職業として農家を営んでいるだけでなく、日本と世界の農業を本気で良くしたいと思っている熱い男性。そして美樹さんもまた、そんな高章さんのパートナーとして事業を支えており、「畑deごはん」というイベントや、子どもも参加できる収穫体験など、さまざまな取り組みを企画運営しています。「今の夢は、畑にたくさんの人を招いて、農業の素晴らしさを伝えること。畑はワンダーランドなんです!」。

忙しいからこそ手に入る「潤いのある暮らし」

レタスを獲っている星野美樹さん
「当たり前だけど、レタスって種からできているんですよ!」と笑顔で話す美樹さん。台風やヒョウで、せっかくの農作物が駄目になってしまうこともありますが、野菜の生命力からパワーをもらっていますよ!と、常にポジティブ

スケジュールを見ると、こまごまとした仕事が多かったり、天気などに左右されたりと制約の多い毎日です。それにも関わらず、美樹さんは常に笑顔! どんなに忙しくても心にゆとりがあり、イラつかず、満たされている。真の意味でのスローライフを満喫しているように見えます。

「満たされている、潤いのある暮らし」は理想ですが、それは決してのんびり暮らすことで得られるわけではありません。毎日、家と会社の往復で終わってしまっても、家事や育児で1日が過ぎていっても、今そこにある暮らしの中で自分ができることを見つけ、自分らしく頑張る。そうして得られる「ありがとう」の一言や大切な人の笑顔は、あなたの心に浸み渡り、幸せを育むとともに、幸せにちゃんと気付ける心を培ってくれているのです。美樹さんを見ていると、実は、わたしたちも、そんな生活を手にしているのかもしれないと感じます。

取材協力:農園星ノ環
Photo:Kunio Kaneda