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ふつうに毎日着たくなる「藍」を使ったファッション 最新モードを益子から世界へ発信

2015.11.24
AISOME伝統と未来をつなぐファッションショー

9月26日栃木県益子町で、とあるファッションショーが開催されました。ランウェイを歩くモデルたちが身に纏うのは、すべて美しい藍色の服。益子で200年以上続く伝統文化「藍染め」の魅力を発信しようと企画された「AISOME伝統と未来をつなぐファッションショー」です。寛政時代に創業、今なお昔ながらの手法で藍染めを行う日下田藍染工房と、6名の若手デザイナーが集結。「まちに溶け込む藍」をテーマに、ショーのための作品ではなく、あくまで日常で着られる藍の服19着が並びました。

藍の染料作りは「発酵」が肝心

藍染液づくり
江戸時代から受け継がれる藍染液づくり。天然原料のみを使い、藍の魅力を存分に引き出した美しい色が生まれる。

コレクションをご紹介する前に、まずは「藍染め」について簡単にご紹介しましょう。藍はタデ科の植物。日本では、昔から染料や漢方薬の材料として活用されてきました。藍から染料を作るにあたって、もっとも大事な工程が「発酵」。味噌やチーズのように、職人がその日その日の気候と藍の状態を観察、調整しながら、およそ100日がかりで発酵させます。発酵の工程がうまくいかないと、「ジャパンブルー」と称えられる美しい藍色は生まれません。藍の染料づくりは、まるで赤ちゃんをあやし、育てるような繊細さが求められる仕事で、長年それに携わる職人さんの勘と手間ひまに支えられているのですね。

ファッションショーの会場は、益子焼協同組合の土置き場(益子焼の原料となる土の保管場所)。優しいベージュの土が、濃淡様々な藍色の服を引き立てます。来場者が続々とつめかけ、会場は立ち見の観客でいっぱいになる盛況ぶり。日下田藍染工房の9代目日下田正さんが最前列で見守る中、ショーがスタートしました。

花びらをヒントに生まれたペプラム 

tatoeのペプラムのセットアップ(AISOME伝統と未来をつなぐファッションショー)

今年の6月に自身のブランド「tatoe」をスタートさせた二階堂梨花さん。日下田さんの工房にあったコットンレースの生地を使い、濃く鮮やかな藍色を主役に、ペプラムが印象的なセットアップを提案しました。藍が植物から生まれる染料であることをヒントに、「花びら」をイメージした立体感のある服をデザインしたそうです。

「植物は時間が来ると枯れてしまうけれど、藍はその色が美しいまま残る、それが素敵だなと思いました。ペプラムは、本物のトルコキキョウの花びらからとった形をもとに型紙を起こし、不規則で自然な形が美しいフレアに落とし込んでいます」(二階堂さん)。

あえて藍一色で仕立てたことで、女性らしいシルエットがより際立ちます。クールでフェミニンな服には、観客から「欲しい!」の声が上がりました。

ドラマチックな手染めのグラデーション 

SHUTTLEコート(AISOME伝統と未来をつなぐファッションショー)

続いての作品は、SHUTTLEのデザイナー和田佳久さんのもの。白と藍の大胆なコントラストは、ランウェイでも一際その鮮やかさが観客の目を惹きつけました。

「藍の青色の中にある白がきれいだなと思って」と語る和田さんが選んだ生地は、ホワイトデニム。「白」を引き立てる藍使いを追及し、日下田藍染工房の職人小嶋さんと共に、手作業での製品染めにチャレンジしました。

完成した白いコートを藍で染めるというのは、一発勝負の緊張感極まる仕事。あえてそのリスクに挑んだかいあって、ドラマチックな濃淡が印象的な一着が出来上がりました。手仕事だからこそ実現した藍色のにじみが美しく、和田さんの狙い通り、白と共にある藍色の魅力が存分に発揮された作品でした。

ジャパンブルーからひらめいた、黒と藍の日の丸

NICK NEEDLESコート、Tシャツ、ボトム(AISOME伝統と未来をつなぐファッションショー)

いわゆる「藍染めの服」という印象を覆すような、モード感たっぷりの作品を発表したのは、宇都宮を拠点に活動するNICK NEEDLESのデザイナー髙橋健太さん。「昔は日本各地に藍染の服が溢れていた時代があって、日本の藍の美しさが『ジャパンブルー』と称えられていた。そんな話を職人さんたちから聞きく中で、『日の丸』を取り入れたデザインが浮かんできたのです」(髙橋さん)。

インナーのTシャツには、自身のブランドNICK NEEDLESのコンセプトカラーでもある「黒」と「藍」で日の丸が表現されています。ツートンカラーのTシャツとボトムに対し、コートは潔く藍一色。脇を絞った細身のシルエットは、どんな世代、性別の人でも着られそうなかっこよさです。

服を一枚のキャンバスに見立てて

NICK NEEDLESバルーンシルエットのトップス(AISOME伝統と未来をつなぐファッションショー)

髙橋さんの作品をもう一点。こちらの主役は、黒と藍をグラフィカルに表現した、バルーンシルエットのトップスです。前作同様モードな雰囲気で、ハイヒールとのバランスも抜群。このままパーティに着ていけそうなエレガントさがありますが、意外にも素材はスウェット。もともと立体的な服作りを得意とする髙橋さんが、服を一枚のキャンバスのように見立て、黒と藍を幾何学的に縫い合わせることで完成させた一着です。

黒が藍の色合いを際立たせ、丸みのある服のシルエットと、直線的な配色とのコントラストも印象的。モデルさんの雰囲気とも相まって、今までになく新鮮なイメージで藍の服を見せてくれた力作でした。

若きデザイナーたちが揃って口にしたのは、200年の歴史に支えられた藍染めの強さと、時代を超えた美しさ。深みのある発色のみならず、色が褪せにくい、生地そのものを強くするなど、藍染めがもたらす機能性は古人の知恵として人々の暮らしに生かされてきました。彼らのみずみずしい感性が生んだリアルクローズは、私たちに藍染めの服の新たな一面を見せてくれました。

Photo: AIZOME実行委員会、Kunio Kaneda
Text: Shuko Yaginuma