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京都「冨田屋」女将に聞く、おもてなしの心と着物を素敵に着こなすポイント

2016.01.07
「西陣暮らしの美術館・冨田屋」冨田屋の坪庭
季節の風の流れを感じる坪庭や茶室など、暮らしそのものが文化である町家の様子

誰もが「楽しく穏やかに一年を過ごせますように」と願う、新年の始まり。これから、初詣や節分、ひな祭りなど日本の伝統を感じられる歳時が続きますが、今年は気分も一新! 着物でお出かけをしてみるのはいかがでしょうか?

そこで、京都で130年間余り続く呉服問屋であり、国の登録有形文化財に指定されている店舗兼住居で西陣の商家の暮らしぶりを紹介している「西陣暮らしの美術館・冨田屋」冨田屋当主・田中さんに、着物で過ごす際の心がまえやマナー、魅力を引き出すコーディネート術まで、教えていただきました。

マナーの前提とは、相手を慮る気持ち

町家「冨田屋」を案内する田中峰子さん
町家「冨田屋」に掲げられている書
町家「冨田屋」を案内する田中峰子さん。努力や感謝の心を大切にする姿勢など、より良く生きるための心得を書いた書も紹介

有形の文化財の建物が残っているだけでなく、そこに息づく無形の心こそが本当の京都の姿と感じています。

よく勘違いされがちなのですが、マナーとは決まった型を義務的に行わなければならないものではなく、臨機応変に対応してこそ生きてくるものだと思います。

そういった意味で、立ち居振る舞いだけでなく笑顔もとても素晴らしいマナーと言えます。究極ですが、たとえ細かなマナーを知らなくとも相手をつねに尊重して状況を見極めることで、自然に優雅なふるまいができるというわけです。

着物で出かけることは、相手を尊重する表れ

冨田屋の宝蔵
田中峰子さんの案内による、京都の伝統ある"生きた町家"に触れる時間。神様に守られ、神様と共に暮らすという心の在り方を大切にすることから、町家の宝蔵に、日々手を合わせます

何かの行事などに着物でお出かけをすることは、それだけで素晴らしいおもてなしです。時間をかけて着物を着て行くということは、主催者を敬う心を持っていることです。

最近では、「マナーを教えてください」「このマナーは合っていますか?」と、すぐに答えを求めようとしている方が多いように感じます。その前に、まずは自分で振る舞いについて考えていただきたいと思います。

確かに堂々と自信をもって振る舞うには、マナーの基礎を習ったり、様々な人生での経験の積み上げが必要だと思います。そこで、こちらでは町家見学と京のしきたりのお話を学べる基本の体験コースや、着付け、お茶席体験など様々な体験コースを用意して、伝統やマナーについて気軽に学べる機会を設けています。

幾とおりにも着こなせる、着物の魅力とは

ここで、着物の魅力を改めてお伝えしたいと思います。着物の魅力は、何といってもバリエーションの豊かさにありますね。着物そのものだけでなく、帯や小物など、トータルで無限のコーディネートを楽しむことができます。また、春であれば花々やひな祭りの柄、秋で言えば紅葉......など、季節が着られることは何よりも醍醐味ですね。

体型も、年代も選ばずにひとつの着物を調整してまとうことができます。お母さま、おばあさまなどから譲り受けた着物を、何代も着こなしていけることは、洋服にはない魅力ですね。

着物のお出かけ時に差がつく、ヘア&メイクのポイント

着物を着ると洋服とはガラッとイメージが変わって見えるので、ヘアスタイルやメイクも少し変えると良いでしょう。まずヘアスタイルは、首もとやうなじを美しく見せるために、首まわりに髪の毛が下りていないほうが良いですね。長い方はシンプルにひとつにまとめると、女性らしく上品で清潔感のある印象に見せることができます。

メイクは、全体的に普段より華やかな色使いのメイクがおすすめです。普段より少しハッキリした明るい色の口紅を塗ると、顔立ちが華やかに見えますよ。

着物を美しく着るコツは、"着慣れる"こと

田中峰子さんからお座敷での姿勢を教えていただく
着物を着ると背筋がぴんと伸びて姿勢がよくなる。その姿でも凛とした美しい姿になっていきます

「着物を美しく着こなすのは、どうすればよいですか?」と、よく聞かれます。

それには、「着慣れることが一番」とお答えしています。洋服でも、日々、色々なコーディネートを試してみて、はじめて自分にしっくりくる色や柄、合わせ方などが分かってきますよね。実はそれと全く同じです。

「習うより慣れろ」とはよく言ったもので、何事にも通ずるものですが、着物も着慣れてくると所作もなじんできますし、自然と美しく着こなせていきます。そこで、少しのお出かけからちょこちょこ着て行って、着慣れるのがおすすめです。

また「着物のときは、薄着でも我慢しなければ」と思っている方も多いですが、もちろんカイロを中に貼っても、温め下着を着こんでもOKです。堅苦しく考えず、洋服と同じように自分に合わせて防寒してかまいません。

そしてもうひとつ、とても大切なのは着物を着ているときの「姿勢」です。お腹に力をいれて顎を引き姿勢を正すだけでも、美しく優雅に見えますよ。

着物で家に上がるとき、魅力的に見えるマナーとは?

最後に、少し基本的なマナーをお伝えします。

田中峰子さんから玄関先での振る舞い方を教えていただく
第一印象を格上げする、玄関先での着物での振る舞い方

まず、玄関から家に上がるときに、気をつけていただきたいことがあります。草履を脱いで部屋に上がるとき、裾が広がらないように自然に押さえ、できるだけお尻を相手に見せないようにすると、相手を敬う気持ちが表せますしとても上品に見えます。

座り方は、お腹周りの布に余裕を持たせた状態で、指の第二関節の部分を畳につき、指と膝で移動しながら座布団に座りましょう。座布団の後ろから両足を少し下に落としておくと、楽に美しい姿勢で座ることができます。座布団の上を足で踏んで歩くのは避けてくださいね。

田中峰子さんから、座布団の座り方を教えていただく
和室に通されたときの優雅な座り方1
田中峰子さんから、座布団の座り方を教えていただく
和室に通されたときの優雅な座り方2
田中峰子さんから、扇子を使ったマナーを教えていただく
相手へ尊重の心を表すための、扇子を使ったマナー

扇子などの小物を活用するのもおすすめです。挨拶をするときは、扇子を自分の前において挨拶をすると、お客様から一段下がっているという気持ちを表現できるんですよ。ここでも、相手を敬っているという心を表すのが望ましいですね。

いかがでしたか? 着物を着こなし素敵に見える人は、今まで身に着けたものを自然な姿で行っているからなのですね。殺伐とした時代だからこそ、日本古来の四季のイベントを大切にして五感で感じることで、ほっこりとした気持ちや思いやりの心を呼び覚ますことができそうです!

取材協力:西陣くらしの美術館 冨田屋
Text:Yuki Ishihara
Photo:Momoko Yoshikawa