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歌舞伎俳優・中村米吉さんに聞く~女方から見る日本女性の美しさ~

2016.02.18
弱冠22歳の中村米吉さんですが、受け答えや立ち姿、何気なく着物の襟を正す姿には品があり、歌舞伎俳優としての風情が漂います。2016年を生きる米吉さんに、日本女性の魅力について伺いました。

佇まいにゆとりを感じる歌舞伎の女性たち

五代目中村米吉

―――新春浅草歌舞伎を拝見しました。歌舞伎の中の女性たちは、佇まいがゆったりしていて余裕を感じます。

ご観劇ありがとうございました。ご覧いただいた『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし) 源氏店の場』のお富さんは、いろいろな経験をしているのでそう簡単には動じないんでしょうね。相手がまくし立ててきたことに対して自分も同じようにやり返すと、お富という人物が小さくなってしまうというご指導をいただきました。だからと言って、あんまりのろのろしても芝居のテンポが崩れてしまうので、難しいところですね。

―――お富さんの憂いを帯びた瞳や、キリッとした眼差しなど、とても目ヂカラを感じました。

「目は口ほどに物を言う」という言葉があるくらいですから、やはり目の使い方というのは大切なんだと思います。私自身も先輩方やお師匠さんに目の使い方をよく注意されてるんですよ。

女方が思う「女性の色気」

五代目中村米吉

―――女方を演じられていますが、どうしたらそんなに色気を出せるのでしょうか。

「色っぽい」と言っていただけるのはありがたいですが、本当はなくて困っているくらいなんですよ(笑)。

色気というのは、いろいろな経験を積み重ねた先にあるものなので、先輩方に教わりながら勉強しているところです。もちろん、「色気の出し方」そのものは教えてはいただけません。先輩方の舞台を拝見したり同じ舞台に立たせていただきながら、先輩方の空気感や風情を勉強させていただくことが大切ではないかと思っています。

先輩方の真似をしながらも物真似にならないよう、自分なりに勉強していきたいと考えています。

―――やはり、色気はそう簡単に出せるものではないのですね。

醸し出されるものですからね。何か「コツがある」というものではないと思います。そういうのって、お芝居だけではなく世の中の女性にも共通するところもあるのではないでしょうか。女性は、好きな男性の前では自然と「イイ女」でいられるんじゃないでしょうか。でも、だんだんとそれができなくなってしまう方が、思いのほか多いかもしれないですね。

―――確かにそうですね。特に結婚すると旦那さんの前でも気を抜きがちです。

心の面でも、気遣いとか相手をまっすぐ思う気持ちとかが大切なんだと思います。歌舞伎に登場する女性たちは、みんな自分の気持ちに正直ですよ。たまに、今の自分が一個人としてその人に会ったら、想いが強すぎてこわいと思う人もいますけど(笑)。でも、きっと江戸時代の女性というのは、そういう女性に憧れていたんじゃないかと思います。

当時は、結婚するまではお父さんの言うことを聞いて、結婚したら旦那さんの言うことを聞いて、旦那さんが死んだら息子の言うことを聞きなさいと言われていたようですし。だから、女性たちはそれを超えていきたいと思っていたんじゃないでしょうか。好きな男のために命を落とすという話も多いですからね。

逆に、女のために命を落とす男の話はほとんどないですもんね。結局意気地なしなんですよ、男は(笑)

日本女性には、日本女性ならではの美しさがある

―――女性らしさが宿るパーツはどこだと思いますか?

手なんじゃないでしょうか。その人らしさが一番出るところだと思うんですよね。キレイな手がいいというのではなく、家事や仕事で荒れてしまったりペンだこのようにお仕事の様子がでてきたりと、その人の生活や人となりがそのまま出るところではないかと感じます。

あとは自分らしさを大切にしている人は素敵ですよね。飾らない、その人本来の美しさというのがあると思います。

―――日本女性の美しさはどういうものだと思いますか?

自分に合ったお化粧や髪型、服装などをするのが大切なことだと思います。コンプレックスもあるかと思いますが、それを1つの自分らしさとして大切にして欲しいですね。

私はタレ目なんで、それをコンプレックスに思っていました。お化粧で釣り目にしたりといろいろと試行錯誤しましたが、最近ではタレ目を生かせるお化粧にしています。持って生まれた自分らしさを生かしたお化粧にすることが、日本女性らしい美しさになると思います。

そして、せっかく日本に生まれたんだから、着物を着てみるのもいいことかもしれません。日本らしい美しさというものに自分が合っていくかもしませんしね。

女性たちが頑張る姿は「彩り」になっていく

五代目中村米吉

―――maicoの読者のように、家事や仕事、自分磨きなどを頑張る女性をどう思いますか?

家事や仕事を頑張りながら、自分磨きに精を出すってすごいですね。そんなに色々できないもの。そういう中で家事や育児というのは、数字が出ないお仕事だから終わりが見えないですよね。だから、すごいと思いますよ。

毎日、色々なことを頑張ったり、お化粧をしてキレイになったりするのは素敵なことですし、生活の彩りになると思います。それに、そういう努力を続けることによって、その方自身がひとつの彩りになりますよね。

―――歌舞伎を拝見して、その華やかな舞台や美しい踊り、お芝居に出てくる魅力的な女性たちに見とれてしまいリフレッシュしました

そんなふうに頑張っている女性にとって、歌舞伎を観るというのはいいリフレッシュになると思います。難しそうだと敬遠するのではなく、とりあえず観に来ていただきたいですね。劇場と言うのは日常生活とは別の空間ですから。私たち役者も、幕が開いたらお客様に夢のような別世界をご覧に入れたいと思っていますからね。

せっかくですから、できればちょっとおしゃれをなさって、お芝居をゆっくりご覧になってお楽しみいただきたいです。

―――最後に、maicoの読者にエールをください!

たまには歌舞伎でも鑑賞して(笑)、上手に息抜きをしながら、自分らしさを大切になさってください。

【中村米吉さん プロフィール】
屋号:播磨屋
定紋:揚羽蝶
中村歌六の長男。1993年3月8日生まれ。2000年7月歌舞伎座『宇和島騒動』の武右衛門倅(せがれ)武之助で父・歌六の前名を継ぎ五代目中村米吉を襲名し初舞台。
公式サイト:NAKAMURA 中村歌六 米吉 龍之助


【中村米吉さん 公演情報】
歌舞伎座 「中村芝雀改め五代目中村雀右衛門襲名披露 三月大歌舞伎」
日時:2016年3月3日(木)~27日(日)
昼の部 午前11時~ 夜の部 午後4時30分~
会場:歌舞伎座
演目:昼の部 『寿曽我対面』『女戻駕』『俄獅子』『鎌倉三代記』『団子売』
   夜の部 『双蝶々曲輪日記 角力場』『五代目中村雀右衛門襲名披露 口上』『祇園祭礼信仰記 金閣寺』*中村米吉さん出演『関三奴』

出典: 歌舞伎座の公演情報「歌舞伎美人(かぶきびと)」

Photo:Kunio Kaneda