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幸運を引き寄せる!?手作りお屠蘇で2017年を良い年に!日本の美習慣「お屠蘇」

2016.11.29
屠蘇散

日本ではお正月にお屠蘇(とそ)を飲むのが古くからの習わし。いまではその風習も消えつつありますが、大切にしたい日本ならではの美習慣のひとつです。今回、かほり紫代表の西島紫さんの手ほどきを受けながら、お屠蘇のもとになる屠蘇散(とそさん)を手作りしてみました。

"お屠蘇気分"のお屠蘇って何?

お屠蘇

お正月のおめでたい気分を「お屠蘇気分」なんていいますよね。そもそも、お屠蘇とは何なのでしょうか?

「お正月に飲む日本酒をお屠蘇だと思っている人も多いのですが、お屠蘇とは漢方生薬を調合した粉末状の屠蘇散(とそさん)を、日本酒やみりんに漬けこんで作る薬酒のこと。屠蘇延命散や延寿屠蘇散と呼ばれることもあります」(西島さん)

"屠蘇"という名前の由来には諸説ありますが、「邪気を屠(ほふ)り、魂(心身)を蘇(よみがえら)せる」という意味があるといわれているそう。つまり、お正月に新しい一年の健康を願って飲む縁起物なのですね。

屠蘇散は、中国・三国時代の名医であった華佗(かだ)という人が、疫病を予防する目的で創作したといわれています。日本には平安時代に伝わり、まずは宮中の正月行事で使われはじめました。江戸時代になると、幕府や民間のあいだにも広まっていったといいます。

「昔は、"一人これを呑めば一家病無く、一家これを呑めば一里病無し"といいながら、年少者から飲むのがしきたりでした。年少者から飲む理由は、かつての毒見の名残と"若い世代の生気を年長者へわける"という考え方によるもの。だから、厄年の人は最後に飲んでいたんですよ」(西島さん)

身近なスパイスも使われる!屠蘇散の中身とは

お屠蘇

屠蘇散の調合の仕方は書物によってさまざま。絶対にこうでなくてはいけないという材料や分量の決まりは、とくにないそうです。

「寒い時期なので体を温めるものとか、お正月の食べ過ぎの消化促進とか、そういう働きのある生薬を選んで調合するとよいと思います」(西島さん)

よく使われる生薬は、陳皮(ちんぴ/ミカンの皮)、桂皮(けいひ/シナモン)、花椒(かしょう/中国山椒)、丁子(ちょうじ/クローブ)、大茴香(だいういきょう/スターアニス)など。

たとえば、陳皮には気の巡りをよくしたり、お腹の張りを改善したりする働きがあるといわれています。また桂皮には、体を温めたり、消化機能を高めたりする効果が期待できます。こうしてみると、料理のスパイスとしておなじみのものも少なくありませんね。

ちなみに西島さんは、中国の唐時代の総合医学書の記述に則って、上記のような生薬を中心に全8種類の生薬を調合しているそうです。

手作りで自分好みのお屠蘇を!屠蘇散作りに挑戦

お屠蘇

ひと通り説明を聞いたあとは、実際に屠蘇散作りに挑戦してみました。

「それぞれの生薬の特徴をとらえてお好みでブレンドしてみてください。陳皮を多めに入れたらフルーティな香りが強くなりますし、桂皮や花椒を多めにするとスパイシーになります。紅花(こうか/ベニバナ)や大棗(たいそう/ナツメ)をブレンドして、味を調えるのもおすすめですよ」(西島さん)

座卓のうえには西島さんが用意してくれた色とりどりの生薬が並んでいます。それをひとつひとつ手に取り、香りを確かめながら、適量と思われる量をスプーンですくって椀の中で混ぜていきました。

お屠蘇

さまざまな香りに囲まれていると、心が落ち着き、おだやかになれます。混ぜ終わったら、小分けにしてお茶パックなどへ。湿気ないように、冷暗所(冷蔵庫など)で保管しておくとよいそうです。

屠蘇散からお屠蘇を作る方法

お屠蘇

屠蘇散を日本酒に3~5時間漬ければ、お屠蘇のできあがりです。この日は、西島さんがその日の朝に漬けたというお屠蘇をいただきました。フルーティな香りと爽やかで複層的な味わいが胃の腑にしみます。

「長く漬けすぎると苦味がでます。最初はちょっと漬けて軽く香りを楽しむくらいでも充分。翌日も少し長めに漬ければ使えます。そのあとは中身を出しておかゆに入れ、薬膳がゆのように食べるのもおすすめ。美味しいし、エコですよ」(西島さん)

甘口が好みなら、日本酒のかわりにみりんに漬けてもOK。地域によっては日本酒とみりん半々のところもあるそうです。また、意外なところではワインに漬けても美味しいのだとか。

知っておきたいお屠蘇の作法、飲むタイミングや飲む順序

お屠蘇
屠蘇器。三つ組の盃は「屠蘇三献」といって、ひとつずつ年少者から順番に回し飲みをする

お屠蘇を飲むタイミングは元日の朝、お雑煮やおせち料理を食べる前。いわば食前酒ですね。何かを食べながら飲むのは正式な飲み方ではないそうです。また、お屠蘇は、屠蘇器と呼ばれる酒器揃え(盃・盃台・銚子・盆)で飲むのが正式とのことです。

「もちろん屠蘇器がなければお猪口でもいいですし、適当な瓶には水引を飾るだけでも雰囲気がでます。正月はシチュエーションを楽しむとき。ぜひ、女性ならではのセンスを発揮してみてください」(西島さん)

西島さんはオーガニックにこだわり生薬は漢方薬局で購入しているそうですが、食品スーパーや専門店などで買えるものもあります。まずは手に入る3種類くらいで作ってみてもよいかもしれませんね。みなさんも2017年の幸運を、お屠蘇で引き寄せてみませんか?

かほり紫代表 西島紫さん

香司(和の調香師)、漢方上級スタイリスト、養生薬膳アドバイザー。天然香原料と漢方生薬の研鑽を重ね、嗅覚と味覚の両面から伝統文化と安らぎを追及。漢方生薬としても使用される天然の香原料を中心に、1500年前に日本に伝わった和の香りを、現代でも楽しめる新しい形で提案している。オリジナルの和の香りの制作・販売のほか、香座(和の香り創作レッスン)や漢方の恵みレッスンも開催。鎌倉の名刹・5カ寺の塗香(ずこう)の開発・制作も担当し、鎌倉らしい新しいお土産として好評を得ている。

http://kahori-murasaki.main.jp/ https://www.facebook.com/kahori.murasaki/

Text:Emiko Furuya
Photo:Kunio Kaneda