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ポイントは小指にあり!?鎌倉時代から続く礼法に学ぶ「凛とした美しさ」の作り方

2017.01.10

華やかな西洋的な美しさに対し、内側からにじみ出るような「凛とした美しさ」は、日本人ならではの魅力です。でも、凛とした美しさは、にじみ出るものだからこそ手に入れるのが困難。だからこそ、憧れる女性は多いと思います。具体的にどのようなことを心掛ければ、宿すことができるのでしょうか?

鎌倉時代から続く礼法「小笠原流」の31世小笠原清忠宗家のご子息、小笠原清基さんはこう言います。

「動きに無駄がなく、調和がとれているとき、凛とした美しさが宿ります」。

小笠原流は、鎌倉時代に礼法、弓術、弓馬術を究め、源頼朝の師範となった小笠原長清を始祖としています。日本人の礼や美に対する考え方の礎を築いた伝統的な礼法なので、日本人ならではの「凛とした美しさ」の教えを請うにはぴったり。

そこで今回は、小笠原さんに「凛とした美しさ」を宿す具体策を伺います。

雲や太陽がただあるだけで美しいように、動作も自然であることが美しい

凛とした美しさを宿す秘訣は「動きに無駄がなく、調和がとれている」ということですが、それはどういうことなのでしょうか?

「無駄がなく調和がとれているというのは、とても自然な形だということ。自然界において、ただ雲と太陽があるだけでも美しく感じるように、姿勢や動作においても自然であるということは、美しさを宿す大きな要因となるのです。

姿勢において自然であるということは身体の機能に合理的に即しているということを意味しています。例えば猫背になると内臓を圧迫し、消化の機能を妨げてしまいます。本来の背骨の自然なS字の形に沿って立つことが大切です。

動作についても同じです。たとえば、食卓の上に茶碗、小皿が並んでいて、その奥にコップがあるとします。コップを取りたいとき、食器をまたいで取るのは良くないことだと習いませんでしたか? なぜなら、そうすると袖が汚れたり、食器を引っかけてしまったりするからです。礼法の大前提は、粗相が起きないようにすること。つまり1つ1つの動作にはすべて意味があるのです。この考え方がわかれば、すべてにおいて、合理的で無駄がなく、調和のとれた動作を行えるようになります。」(小笠原さん)。

立つときに小指を軽く伸ばすと、全身の調和がとれて美しく見える

NGの立ち姿

「鏡を見て、全身の状態をチェックしてみてください。上のイラストのようになっているのはNGです。パソコンでの作業や、スマートフォンの普及などによって、上体が前かがみになり、顔が前に突き出し、肩がすぼまった状態になる方が増えています。これだと、胸が圧迫され呼吸も浅くなってしまうので、体の構造的にはかなり無理をしていることになります。

また『姿勢を正して下さい』と言うと、背中を反り過ぎてしまい、腰が引けてしまう方も多く見られますが、これは、体幹を鍛えることで改善できます」(小笠原さん)。

OKの立ち姿

「上のイラストが、正しい姿勢のお手本です。『耳は肩に垂れ、あごが浮かず、襟がすかぬように』と礼法では指導しています。このように立つと、窮屈な感じがスッと消えていくと思います。

また、このときに両手の小指を意識的に伸ばすようにすると、全身の調和がとれて、より美しく見えます。体の末端に意識が及んでいない人は、メイクや洋服は完璧なのに、靴がちょっと汚れているような、残念な印象を与えかねません」(小笠原さん)。

「モデル歩き」は華やかだけど、凛とした美しさとは異なる

次は、応用編の「歩き方」を教わります。

ポイントは「骨盤の上下左右の回転運動を最小限に抑えること」!

歩き方

「歩くときは、なるべく体が前後や左右にふれないようにします。骨盤の動きを最小限に抑えるようなイメージで歩きましょう。また、いわゆるモデル歩きでは『一本の線の上を歩くように』と教わるようですが、これは小笠原流の教えとは異なります。これではお尻を振るような動きになり、疲れやすく、長くは歩けないため、体にとっては不自然な動きになるからです。小笠原流では、一本の線を左右の足ではさみ、左右の足が平行になるように静かに足を踏み出すように指導しています」(小笠原さん)。

美しい姿勢や歩き方を生みだす、体幹の鍛え方

正しい立ち方や歩き方をいざ実践しようとすると、なかなかうまく出来ない人も多いのではないでしょうか。
原因は「体幹が鍛えられていないから」。

そこで、体幹を鍛える方法についても教えていただきました。

体幹を鍛える方法

「足にローラーがついているかのように、なめらかに動くのが理想です。最初は難しいと思いますが、練習を重ねるうちに内腿や体幹が鍛えられて、出来るようになりますよ」(小笠原さん)。

「立つ」「歩く」という当たり前のように行っている動作が、こんなにも難しくて奥深いものだということに驚かされたのではないでしょうか。

「小笠原流の歌訓に『極めれば無色無形(むしょくむけい)なり』という教えがあります。修業を重ねていくと無駄がそぎ落とされ、ごく自然な動きになるという意味です。

立ち方で言えば、美しく見せようと足を交差させたり、手振りで演出したりするのではなく、ただ立っているだけなのにこの人は美しいという究極の状態を目指しましょうということ。これこそが、凛とした美しさを宿すことにつながるのではないでしょうか」(小笠原さん)。

小笠原清基さん プロフィール

1980年生まれ。弓馬術礼法小笠原流31世小笠原清忠宗家の長男。3歳で稽古を始め、小学5年で鎌倉の鶴岡八幡宮で流鏑馬神事の射手を務める。大阪大を卒業後、筑波大大学院にて神経科学博士を取得。「家業を生業にしない」という家訓があり、現在、製薬会社の研究員。 NPO法人小笠原流・小笠原教場 理事長、一般社団法人日本文化継承者協会 代表理事、一般社団法人蛍丸記念刀剣文化遺産伝承会 顧問、日本女子体育大学弓道部 監督 主な著書『小笠原流 美しい大人のふるまい』『疲れない身体の作り方: 実用的、効率的かつ美しい身体作法』

Illustration:Azusa Otsuka