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デザイナー谷本幹人さん、コーヒー好きから一転!日本茶にハマって知った日本の美

2017.02.21
谷本幹人さん

日本茶の魅力にハマり、まったく新しいスタイルの体験型日本茶専門店「東京茶寮」をオープンした谷本幹人さん。日本茶と向き合う中で改めて感じた日本茶や日本の魅力、日本女性の美しさなどを伺います。

 

 

日本茶は「ダサイ」と思っていた

―――谷本さんは、元々は大のコーヒー好きだったと聞いています。日本茶にハマったきっかけを教えてください。

谷本さん:僕はいわゆる健康オタクなんです。抗酸化にけっこうハマっていたころに、ちょうどサードウェーブコーヒーが流行りました。コーヒーにはポリフェノールが入っていて体にいいし、ブームの後押しもあって、積極的にコーヒーを飲むようになりました。でも、色々調べてみると、実は日本茶のほうが健康効果が高いのではないかと思うようになったんです。

 

 

谷本幹人さん
経営者でありデザイナーの先輩と立ちあげたデザイン会社で様々なプロジェクトを企画・実行している谷本幹人さん。「東京茶寮」はそのプロジェクトの一環。日本茶を飲むようになってから、朝の目覚めがすっきりして体調もいいそう。

日本茶に含まれているカテキンには、抗酸化作用や血中コレステロールの低下、抗菌作用などがありますし、カフェインには疲労感や眠気を取る効果があります。さらに、リラックス効果があるテアニンも入っていますし、その他にもダイエット効果や美肌効果など、女性にうれしい働きが数多くあります。調べれば調べるほど日本茶のパワーに驚かされました。だから、日本茶の魅力を発信したいと思うようになったんです。

それまで、日本茶は情緒的な印象が強すぎると感じていましたし、実を言うと、茶畑はいかにも日本ってイメージで「ちょっとダサイ」くらいに思っていました。でも、いざ静岡へ足を運んでみたら、山々を背に広がる刈り込まれた茶畑はミニマルなデザインで美しく、本当に素晴らしかった。僕自身、日本茶のことをよく知らないくせに、偏った見方をしていたことに気づかされました。

 

 

世界初!ハンドドリップで淹れる日本茶専門店をオープン

東京茶寮
「煎茶2種飲み比べ+お茶菓子」1300円(税込)。7種類の茶葉の中から2種類、3種類のお茶菓子から1つを選べる。お茶は三煎までいただける。お茶の種類によってはもちろん、一煎目・二煎目で異なる色あいやフレーバーを楽しめる。

―――「東京茶寮」は、バリスタがハンドドリップで日本茶を提供するお店ですよね。どうしてこのようなスタイルをとっているのですか?

谷本さん:今の日本人にとって、日本茶は二極化していると思うんです。1つは、茶道。もう1つはペットボトルのお茶です。茶道は伝統的なものなので、多くの若者にとってはかしこまった印象が強く、手が出しにくい。いっぽうペットボトルは手軽な分、単なる大量消費に終始しがちです。だから、この2つの中間を貫く文化を新たに築きたいと思いました。

日本が誇る日本茶は、とても美しい文化です。美というのは、本来は生活の中にこそあるものだと思うんです。でも茶道は非日常的ですし、ペットボトルのお茶は、美とは言い難い。だから、日本茶が持っている美を日常の中に呼び戻して、日常の中に日本茶の文化を融け込ませたいと思いました。

―――それを叶えるのが、ハンドドリップスタイルの日本茶なんですね?

谷本さん:そうです。「東京茶寮」では、日本各地から取りそろえた高品質な日本茶を、バリスタが店内のカウンターでハンドドリップして提供しています。コーヒーと同じく日本茶も「産地」「品種」「蒸し・焙煎」によってフレーバーが大きく異なるので、飲み比べができるメニューを提供しています。

 

 

東京茶寮
茶室をイメージした店内に、ふくよかな茶葉の香りが漂う。JAZZやボサノバが流れるゆったりした空間で、ぜいたくな時間を過ごせる。
東京茶寮

 

 

―――谷本さんは、お店でバリスタとして働かれているんですか?

谷本さん:いえ、僕の仕事は、デザイン会社で自社のプロダクトを作ることです。この日本茶のプロジェクトもその一環です。とはいえ、今は仕事の9割をこのプロジェクトが占めています(笑)。2016年の2月に、日本茶を広めるプロジェクトを起こそうと思い立ち、その翌週には静岡の茶園へ飛んでいました。そして9月にはお店を開こうと決め、10月に施工を開始したのですが、同時並行で日本茶専用ドリッパー(※特許出願中)やパッケージのデザイン、店舗の内装などを手掛けていたので、起きているほとんどの時間をこのプロジェクトに費やしました。

 

 

クリエイティブであるために大切にしていること

谷本幹人さん
「日本茶を新しいライフスタイルとして定着させたい」と語る谷本さん。「文化をひたむきに守るだけではなく、新たな角度で魅力を発信することで、さらに発展させていきたいです」(谷本さん)。

―――「東京茶寮」がオープンしたのは2017年1月5日ですよね。わずか11カ月で思いを形にするのはすごいと思います。次々とプロジェクトを立ち上げていらっしゃいますが、クリエイティブであるために大切にしていることを教えてください。

谷本さん:「人の言うことを半分聞く」ということでしょうか。僕は日本茶に関しては、まったくの素人でした。そんな人間が、農園の方や器作りのプロに対して貢献できることは、先入観にとらわれずに話を聞いて、合理的なアプローチを突き詰めていくことです。知識がないからこそ、柔軟な発想ができることもあると思うので、人から話を聞くときには、必ずしも真実だと思わないようにしています。しかしそのいっぽうで、どこか真実もあると思うようにしています。

 

 

東京茶寮
近くで見ると単なる平滑な面でなく、わずかな凹凸を感じてものづくりの息遣いに触れられる。江戸小紋にインスピレーションを受けたカップ。一煎目のカップ(写真奥)と、二煎目のカップ(写真手前)はデザインを変えている。茶葉のことを詳しく知ってもらうため、名前と詳細のリンク先を記したカードをトレイに立てかけられるようにしたり、日本茶の美しい色あいを楽しんでもらうため照明にこだわったり、谷本さんのアイディアが随所に散りばめられている。

―――「半分話を聞く」というスタンスは、今回のプロジェクトでも生かされましたか?

谷本さん:はい。たとえばこのカップは、作家さんの個性を生かしながら僕がディレクションしたのですが、一煎目と二煎目で形を変えています。一煎目は旨味成分であるアミノ酸を抽出するために50~70度、二煎目はカフェインやカテキンが出て来るように80度で淹れるのが良いと学んだので、だったら形を変えるべきだと思いました。だから一煎目は甘みや香りを楽しめるように、ワイングラスのように香りが対流する形にして、二煎目は温度が少し高くなるので、持ちやすいように取っ手をつけました。

 

 

日本茶の魅力を発信する谷本さんから見た「日本女性の美しさ」とは?

谷本幹人さん

―――日本茶の魅力を発信することは、日本の良さを表現することにもつながると思いますが、谷本さんが考える「日本女性の美しさ」は何だと思いますか?

谷本さん:日本女性の、曖昧なところが好きです。たとえば、「キモかわいい」という言葉がありますよね。ある面から見ればキモいけれど、ある面から見ればかわいい。それを、相対的にとらえて「キモかわいい」と表現するのは独特の感性だと思います。そういう、色々なものを愛でられるボーダーレスな部分というのは、柔軟に物事を捉えられるということ。日本女性ならではの奥ゆかしさも、そうしたところから出てくるのではないかと思います。

 

 

 

 

<プロフィール> 谷本幹人(たにもと みきと)
1990年生まれ。LUCY ALTER DESIGN取締役/クリエイティブディレクター。Webディレクターを経てデザイナーに。プロダクト、グラフィック、写真、映像、Web、店舗内装、所作、言語など一貫してデザインを行う。世界初のハンドドリップ日本茶専門店「東京茶寮」を三軒茶屋にオープンし、日本茶のリデザインを通して世界的な日本発のブランドを作ることを目的に「green brewing」を企画・開発する。

 

日本茶専門店「東京茶寮」

 

 

 

 

取材協力:東京茶寮
撮影:Mina Imai