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食べるのがもったいない!清涼感いっぱいの夏の風物詩「金魚」のお菓子

2017.07.14

彩り豊かな意匠に季節を感じられる和菓子。四季折々の風物を取り入れることが多く、夏は「金魚」をモチーフにしたものもよく見かけます。目にも涼しく、食べるのがもったいないほどかわいい、金魚のお菓子を紹介します。

 

 

金魚は日本の夏の風物詩

水の中をゆらゆら泳ぐ金魚は見た目にも涼やか。金魚は夏の季語でもあり、多くの俳句にも詠まれてきました。金魚すくいは夏祭りの定番でもありますね。

「金魚が夏の風物詩になったのは、おそらくガラス鉢や池を泳ぐ姿に涼しげな印象があったからではないでしょうか」
そう話すのは、室町時代後期に京都で創業した和菓子屋「とらや」広報の奥野容子さんです。

室町時代に中国から伝わった金魚は、当初は値段も高く、大名や豪商が楽しむだけでしたが、品種も改良され次第に庶民の間でもブームになりました。

『江戸の生業事典』によると、江戸時代には夏のはじめから秋のはじめまで、街のあちこちに金魚売りの姿があったようです。「目だかァー、金魚ゥー」という独特の呼び声、両肩に天秤棒をかついだ姿が夏の景物でした。

初期はおもに桶や陶器の鉢などにいれて上から眺める「上見(うわみ)」というスタイルで楽しまれており、その様子は歌川国貞の浮世絵「あつまけんしみたて五節句」にも描かれています。江戸後期には金魚玉といわれる、軒先などに吊るす丸いガラスの容器も登場しました。

大正時代から愛されてきたとらやの「若葉蔭」

とらや「若葉蔭」1個 519円税込(画像提供:とらや)

夏の風物詩である金魚は、季節感を大切にする和菓子のモチーフにもよく使われます。とらやでは、金魚が泳ぐ様子を表現した涼やかなお菓子「若葉蔭」を夏季限定で販売(2017年度は7月8日~7月31日)。大正7年(1918)の資料にすでにデザインと菓銘が残されていたというから、歴史の古さがうかがえます。

「今のようなエアコンも冷蔵庫もない時代に生まれたお菓子です。青葉の蔭を泳ぐ金魚の姿や透き通った水を思わせる見た目、寒天からつくられるすっきりとした味に、暑い夏に五感すべてを使って涼を感じようとした先人の知恵が偲ばれます」(広報 奥野さん)

透明な部分は寒天や砂糖などでつくった「琥珀羹(こはくかん)」で、夏のお菓子によく使われるもの。中で涼しげに泳いでいる金魚は、煉切(ねりきり)を木型で抜いてつくったものです。金魚はウロコまできちんと再現されており、目も一つひとつ職人が描いているため、それぞれの表情が微妙にちがいます。

琥珀羹は数回に分けて重ねるように流し固めることで、葉や金魚に立体感を出しているのだとか。また、涼しげな透明感を出すためには、寒天を煮溶かす際の水の量や、火入れの加減も大切。日々菓子をつくる中で職人たちが身につけていった感覚によりそれらを見極め、透き通った琥珀羹を生み出しているそうです。

琥珀羹の砂糖には、結晶が大きく、純度の高い白双糖を使用しているので、すっきりしとした後味のよい甘さが涼やかな印象。寒天を使っているため、洋風のゼリー等とは異なるしっかりとした食感です。

「意匠・菓銘・味・食感・ほのかな素材の香りから、五感を使って涼を感じて頂けましたら幸いです。ぜひ涼やかな器にのせて、ゆったりとしたひとときをお過ごしください」(広報 奥野さん)

 

 

マスカット味の和風ゼリー 宗家 源 吉兆庵の「金魚」

宗家 源 吉兆庵「金魚」1個292円税込(画像提供:宗家 源 吉兆庵)

コロンとした丸いかたちが目を引くのが、宗家 源 吉兆庵の「金魚」。こちらはマスカットの果汁が入ったみずみずしい味わいの和風ゼリーに、愛らしい型抜き羊羹の金魚を浮かべたもの。周りの透明のゼリーがきれいなグラデーションになっていて、見ていると心が浮き立ちます。

「金魚が泳いでいるように表現するため、金魚のかたちや大きさ、ゼリー部分の色のグラデーションにこだわりました。マスカットのみずみずしい味わいが口の中に広がり、つるんとしたのど越しが楽しめます」(宗家 源 吉兆庵 広報 高田光政さん)

金魚のほかに大納言かのこ豆も入っていて、食感の小気味よいアクセントになっています。5個入りは、中国広東省スワトウの手編みレース籠「スワトウ籠」に入っているので、ちょっとしたギフトにもぴったり。販売期間は、5月中旬から8月中旬です。

 

 

金魚すくいを表現した桂新堂の「金魚の水遊び」

桂新堂「金魚の水遊び」1個648円税込(36枚入)(画像提供:桂新堂)

日本の夏の風物詩として広く親しまれている金魚すくいをおせんべいで表現したのが、桂新堂の「金魚の水遊び」。色とりどりの玉砂利の上を優雅に泳ぐ金魚の姿が描かれています。

「枝豆・南瓜・枝豆など、さまざまな味が楽しめるえびせんべいの詰合せです。金魚のかたちのえびせんべいには、えびの旨味をギュッと凝縮させた、赤えび炙り焼きを使用しています」(桂新堂企画・開発グループ森千尋さん)

金魚すくいに必要なポイのかたちの最中もあり、懐かしさに心が弾みます。6月下旬~8月下旬ごろまで販売される夏季限定のえびせんべいです。

暑い夏、ひとときの涼を運んでくれる金魚のお菓子で、ほっと一息ついてみませんか。

 

 

<取材協力>
とらや https://www.toraya-group.co.jp/
宗家 源 吉兆庵  http://www.kitchoan.co.jp/
桂新堂  http://www.keishindo.co.jp

 

 

 

【参考文献】
・『江戸の生業事典』(渡辺信一郎著/東京堂出版)
・『お江戸の意外な商売事情: リサイクル業からファストフードまで』(中江克己著/PHP文庫)
・『超入門! 江戸を楽しむ古典落語』(畠山健二著/PHP研究所)
・『お江戸の意外な「モノ」の値段: 物価から見える江戸っ子の生活模様』(中江克己著/PHP文庫)
・『ビジュアル版 江戸の町と暮(江戸歴史研究会/メイツ出版)

 

 

 

Text:Emiko Furuya