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平安時代の貴族も愉しんだ「十五夜」の魅力とは?

2017.09.22

月を眺めているだけでも心が和らぎますが、十五夜(中秋の名月)のお月見には、日本人の心を感じさせるモノゴトがあります。心豊かなお月見にするために、知ることから始めましょう。

 

 

実は意味が異なる、「仲秋の名月」と「中秋の名月」

本来、十五夜というのは月齢15日目の満月のことをいいます。その中でも、旧暦の8月15日の十五夜は、一年のうちで最も空が澄んで月が美しく見えることからお月見をするようになり、「十五夜」といえばこの日をさすようになりました。現在は、新暦に旧暦の日付をあてはめるため日付は毎年変わります。そして今年は10月4日が十五夜にあたります。

別名「中秋の名月」というのは、秋の真ん中の名月という意味です。旧暦では7月を初秋、8月を仲秋、9月を晩秋ととらえます。初秋は台風や長雨が続きますが、仲秋になると秋晴れも多く空が澄んで月が最も美しく見えるので、旧暦8月の月を「仲秋の名月」といい、とくに秋の真ん中にあたる旧暦8月15日の十五夜を「中秋の名月」と呼びます。つまり、「仲秋の名月」は旧暦8月の月をさし、「中秋の名月」は旧暦8月15日の月をさすというふうに、漢字ひとつで意味が異なるわけです。十五夜の場合、「中秋の名月」と書くのでご注意ください。

平安時代の貴族も愉しんでいた「お月見」

お月見には大きく分けて2つの目的があります。

1つめは、風雅を愉しむためのお月見で、平安時代頃に中国から伝わりました。昔から「花鳥風月」「雪月花」というように、月というのは風雅を象徴するものとされてきました。四季折々に美しい月が見られますが、特に美しいとされたのが「中秋の名月」です。平安時代の貴族が、中国伝来の月見の風習を取り入れたのが始まりなので、月見の宴を開いて和歌を詠むという、大変雅なお月見でした。

2つめは、収穫に対する感謝と祈りを捧げるためのお月見です。お月見が庶民に広がるにつれ、秋の実りに感謝する行事として親しまれるようになっていきました。昔は月の満ち欠けで暦を作ったり、月明かりで暮らしたりしていたため、人々の生活や心のありようにまで月が深く関わっていました。すると、収穫したものに対しては「お陰さまで今年も無事に収穫ができました」と感謝し、これから収穫するものに対しては「どうぞ豊作でありますように」と祈り、「今、私たちが生きているのは、様々なもののお陰です」とお供えものをして、お月見をするようになっていったと考えられています。

関東と関西では「月見団子」の形が違う

すすきは月の神様の依り代、つまり、宿るところと考えられています。まだ稲刈り前の時期なので、米の豊作祈願として稲穂に見立てたすすきを用いるようになったといわれています。また、お月見のあと、魔除けとして軒先にすすきをつるしておく地方もあります。

月見団子は、感謝と祈りを込めたお供えものです。稲作文化を反映し、日本の行事には餅や団子を供えることが多いのですが、月見団子も同様です。月見団子が丸いのは、満月に見立てているからで、豊作やものごとの結実、健康や幸福をあらわしています。なお、関東では月に見立てた丸いお団子ですが、関西では里芋のような形をしており、小豆餡がついています。この餡は、里芋の皮や月にかかる雲に見立てたものだといわれています。

野菜や果物を供えるのは、収穫祝いを兼ねているからです。十五夜のころは里芋の収穫期にあたるので「芋名月」ともいい、とれたての里芋や旬の野菜をお供えします。また、葡萄のようなツル性のものをお供えすると、お月さまとの繋がりが強くなるといわれています。

 

 

ちょっと怖い!?うさぎが月にいる理由

日本では、月の模様を餅つきをするうさぎに見立てますが、これは仏教説話に由来しています。かいつまんで紹介します。

『昔むかしあるところに、うさぎと狐と猿がおりました。3匹は、疲れ果てて食べ物を欲しがる老人に出会い、老人のために食べ物を集めに行きました。猿は木の実を、狐は魚をとってきましたが、うさぎは一生懸命頑張っても、何も持ってくることができませんでした。そこで悩んだうさぎは「私を食べてください」と火の中にとびこみ、自分の身を老人に捧げました。実は、その老人は、3匹の行いを試そうとした神様でした。神様はそんなうさぎを哀れんで、月の中に甦らせ、皆の手本にしたそうです。』

うさぎが餅をついているのは、「うさぎが老人のために餅つきをしている」とか「うさぎが食べ物に困らないように」といわれており、慈愛や豊年豊作への思いが込められています。

お供えものは、もちろん食べてOK

文化の背景や意味を知ることで、お月見のひとときに深みがでます。お供えものはもちろん食べて構いませんから、月が見える縁側や窓辺にしばらくお供えしてから、みんなで食べましょう。忙しいときは、夕飯のメニューに里芋料理や月見団子を加え、月に向かって感謝をしてから頂くようにするだけでも豊かな気持ちになるでしょう。里芋を皮つきのまま蒸した「衣かつぎ」は、十五夜の定番料理です。

また、部屋の灯りを消して月を眺め、月うさぎに思いを馳せながら月見団子を食べたり、月見酒を愉しんだりしても素敵。できること、やりたいことを取り入れながら、心豊かなひとときをお過ごしください。

 

 

<執筆>三浦康子
和文化研究家/All About「暮らしの歳時記」ガイド。古(いにしえ)を紐解きながら、今の暮らしに生かす方法を、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、講演などで紹介している。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)、監修書『おうち歳時記』(朝日新聞出版)ほか多数。

 

All About「暮らしの歳時記」  https://allabout.co.jp/gm/gt/1758/