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お米から生まれた淡いブルーが美しい、ワイングラス「GRICE」

2018.07.13

涼しげなブルーが特徴的なワイングラス「GRICE」に使われているのは、なんと「お米」。「なぜワイングラスにお米?」という素朴な疑問から商品の魅力まで、生みの親であるガラス作家 花岡央さんに聞きました。

いつもの食卓に馴染む、涼しげなブルーのワイングラス

キリッと冷えた白ワインが美味しい季節になりました。皆さん、ワインを頂くときにどんなグラスを使っていますか? 気楽に家で飲む場合は、いつものグラスを使うという方も、いやいやワインなら脚付きのグラスでないと、という方もおられるでしょう。ただ、フットの長いワイングラスだと雰囲気は出るものの、食卓で仰々しい感じになったり、洗う時に気を使うのが少々負担ということ、ありませんか?

こちらは、ガラス作家 花岡央(はなおか ひろい)さんが主宰する「ヒロイグラススタジオ」のワイングラス。「GRICE(グライス)」と名付けられたこの器は、フット部分の涼しげなブルーが特徴です。この淡い色合いは、私たちが普段食べる「お米」で作られたものでした。

 

 

ガラス作りにお米を使ったきっかけ

ガラス作家 花岡さんがアトリエを構えるのは、備前焼の故郷・岡山県の備前市。幼いころから身近に備前焼がある環境で育ち、花岡さんご自身ももともとは陶芸の道を志していた時期があったそうです。倉敷芸術科学大学へ進学し、陶芸や染色など様々な工芸を学ぶ中で、最終的に選んだのがガラスの道。

「ガラス作りのプロセスが自分に合っていた、というのが大きな理由でしょうか。備前焼の場合、登り窯で焼くとなると、土づくりから始まって、場合によっては一年近くかかることもあるんですね。その点、ガラスなら作った翌日には手に取ることができます。完成物を見て、じゃあ次はこうやったらもっと良くなるかな、と試行錯誤できるところに面白みを感じました」(花岡さん)。

GRICEのつくり手、ガラス作家の花岡央さん(撮影 Yuta Nishida)

その後、大阪の吹きガラス工房「fresco」での修業を経て、2013年に独立。故郷の岡山に戻り、備前の地に自らの工房「ヒロイグラススタジオ」を設立します。改めて自分の名を冠したブランドで作家活動を始めた花岡さん、好きで戻ってきた地元・備前でのもの作りに際し、なにかその土地と結び付きのあるガラス作品を生み出したいと考えるようになりました。

「私の父は米作りをしています。ある年、天候の関係で非常に不作だった時があり、父が落ち込んでいたんですね。丹精込めて育てても、やむをえない理由で商品にならなかったお米を何かに生かせないかな?と思ったのが、GRICE誕生のきっかけになっています」(花岡さん)。

 

 

透明感のある飲み物に合う、淡く繊細なブルー

陶磁器の世界では「灰釉(はいぐすり)」といって、植物の灰を加えた釉薬が昔から使われてきました。それをガラスの発色に応用したのは、備前焼の地で活動し、陶芸を学んだこともある、花岡さんらしい発想だったかもしれません。しかし発色剤の1つにお米を使ってのガラス作りには、色の出方や気泡の入り具合など、細かな調整と試作の繰り返しを経て、発色が安定するまでには2年の月日を要したそうです。

その甲斐あって、完成したGRICEは水を思わせる繊細なブルーが美しいガラスシリーズになりました。特にワイングラスは、花岡さん自身も普段の暮らしの中で使う機会の多い、お気に入りの器になっているそう。

「ワイングラスなので、ワインの色をちゃんと楽しめるように、ボディは透明です。ブルーの色は脚から下のみ。控えめな色なので食卓で目立ち過ぎることもなく、どなたにでも取り入れてもらいやすい佇まいになっているかなと思います」(花岡さん)。

コロンと丸みのあるボディは、どこか愛らしい印象。背が高すぎず、適度な厚みがあり、洗う際にさほど神経質にならずに扱える点も魅力です。ワインはもちろん、日本酒やビール、麦茶やお水などなんでも美味しく頂けますが、ガラスの美しさには「透明感のある飲み物」が一際よく合うようです。

 

 

 

 

350年前から続く田んぼのお米を使っている「GRICE」

GRICEに使われているお米は、実は歴史ある田んぼで育てられたもの。備前市には、日本最古の庶民学校があることをご存知でしょうか? 江戸時代に岡山藩によって開設された「閑谷学校」(現在は「旧閑谷学校」として特別史跡になっています)です。花岡さんの工房近くには、閑谷学校の経営を支える「学校田」として、350年前から米作りが行われてきた田んぼがあり、GRICEにはそのお米が使われています。

印象的なストーリーを持つ、花岡さんオリジナルのガラスの器シリーズ「GRICE」。普段の生活で気負いなく愛用できるワイングラスです。来客時には、エピソードとともにグラスをお出しすれば、それだけでテーブルが華やぎそう。「いつか備前を訪れ、花岡さんの工房に行きつつ、GRICEの田んぼを実際に見る」と、グラスをきっかけとした旅のプランを練るのも楽しいもの。

物語のある日用品は、普段の食卓を越えて私たちの日常を豊かなものにしてくれる。GRICEのワイングラスには、そんなことを教えてもらいました。

 

 

<取材協力>ヒロイグラススタジオ
GRICE ワイングラス

 

ヒロイグラススタジオ

 

 

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Text:Shuko Yaginuma
Photo:Nina Nakajima