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失うもの探しをやめて経験値を高めれば、「今の自分も悪くない」と思えるように

2019.03.19

年齢に対する意識は「若さ=美しさ」が主流ですから、年を重ねることに対して不安になるのは、ある意味仕方のないことかもしれません。でも、年を重ねることでますます美しく、輝いている人が増えているのも事実です。日々、たくさんの女性を考察し、ご自身も凛とした中に、いつまでも瑞々しさを持ち続けている美容エディター・ライターの松本千登世さんに、素敵に年を重ねるためのコツを伺いました。

 

 

大人の肌だから似合うファッションを楽しめばいい

30歳のときに出版社の女性誌編集部へと転職した松本千登世さん。30~40代はどのように過ごしてきたのでしょうか。

「当時は、良妻賢母が30代女性のあるべき姿、といった風潮でしたが、会いたいと思っていた素敵な大人の女性たちに会うことができ、幸せの軸は一人一人違うこと、そして色々な生き方があることを学びました。この経験が今の自分の基礎を作ったような気がします。40代になると、年下の才能溢れるカメラマンやヘア&メイクアップアーティストたちと一緒に仕事をする機会が増え、 "年を重ねる"ことを意味のあることにしなければ、若い人たちと同じ目線で語り合えないことを痛感。年上からも年下からも刺激を受け、それはそれで楽しかったのですが」(松本さん)。

年を重ねることを「意味のあること」にする。この言葉に、ハッとした人は多いのではないでしょうか。肌にハリがなくなってきた、白髪が目立つようになった、疲れやすくなった、お気に入りの洋服が似合わなくなった...。マイナスな面ばかりに目が行きがちだからこそ、プラスに変える方法は誰もが知りたいところです。

「私はコンプレックスが強く、自分にはないものを無意識のうちに探してしまうタイプなんですね。鳥取県人の気質といったら、当てはまらない方たちに怒られてしまいますが、人をうらやましがらせたら私たち日本一だよねと、同郷の友人とよく話しているくらいですから。でも、あるときふと、"ないもの"ばかりに目が行くということは、"あるもの"を見つける達人にもなれると気付いたのです」(松本さん)。

捉え方を変えてみると、年を重ねることは失うものばかりではないと言います。

「私は30代前半まで肌トラブルが多かったこともあり、肌が健康になった50代のいまの方が、古いけど好きです。もちろん、ほうれい線もシミもあるけれど、ダイヤモンドやサングラスは年を重ねた肌の方が、断然似合うんですよ。私は顔にあまり肉がつかないタイプなので、頬骨が出てきて貧相に見えるのですが、サングラスをかけるといい感じに迫力が出てなじむのです。こういうアイテムは、他にもたくさんあります。でも、今思うと40代はなんだかんだ言ってもまだ、若さに執着していたような気がします。若くみられると嬉しいし、もしかしたら若くみえる洋服を選んでいたかもしれません」(松本さん)。

 

 

美しさの基準を、若い肌から味のある肌へ

そんな松本さんが、老化に抗う必要はない、質を高めるケアをすればいいと思えるようになったきっかけは、ある女優さんの言葉でした。

「取材現場でその女優さんが、茶道の道具は使い込めば当然古くなるけれど、お手入れをすれば古さが味となり、美しくなるとおっしゃったんです。"肌もそういうことかもしれませんね、そう思うと楽になりますね"とふたりで盛り上がりました。年を重ねる、その時間を慈しみ、肌もきちんとお手入れして慈しめば、いい肌に出会える。仕事で化粧品の最先端に触れ、ゆっくりと、でも確実に変わっていく肌に感動し、それが力になっていることを私自身が体感しているのに、"ないもの"に目を向けていたのです」(松本さん)。

美しさの裏には必ず努力がある

女優やモデルを多く取材する松本さんは、美しさには必ず理由があることも教えてもらったと言います。

「とある女優さんの会見に出席した友人から聞いた話なのですが、1時間弱の記者会見中ずっと、脚がきれいに見えるようにふくらはぎに力を入れ、かかとを上げていたそうです。友人も真似してみたそうですが、3分と持たなかったそう。あの人は生まれつき美人だから、スタイルがいいから、と思いがちですが、きれいな人は努力をしています。私も女優さんにお会いする機会がありますが、皆さん同じ。努力をしていない人は、多分一人もいません。生まれ持った美しさはあるにしても、それを輝かせることができるかどうかは、努力次第なのです」(松本さん)。

 

 

人と比べなければ、50代はもっと楽しくなるはず!

「自分の幸せと人の幸せは違う。そう思えるようになると迷いがなくなるので、心に余裕が生まれます。経験も大事ですよね。辛い思いや失敗をして傷ついて。そういう経験をすることで、人の気持ちを想像できるようになり、優しくなれるのではないでしょうか。失うものは多いけれど、その代わりわずかながら心に余裕が生まれました。だから、50代の自分も悪くないな、と思えるのです」(松本さん)。

最後に、「年齢」をどう捉えているのか聞いてみると......。

「年を重ねることは、個性だと思うのです。シワが増えると同時に、経験も増えるのですから、自分のこれからが楽しみですね。年下の人たちに、年齢を重ねるって素敵なことだよね、と思ってもらえる人でいたいし、そのための努力はしたいと思っています」(松本さん)。

年齢を重ねたからこそ似合うようになったアイテム

◆レザー

「お手入れさえすれば、使えば使うほど味が出て長く使える。そんなレザーのような年の重ね方をしたいという願いを込めて、最近レザーのアイテムを持つようになりました。ノートは、代々木八幡にある『ハイナインノート』で作ったオリジナルです。『ロエベ』のバッグは、20年以上前に購入したものなのですが、気分に合わずずっと寝かせていたもの。古いけれど、それが新鮮に映るみたいで、よく褒められます」。

 

 

◆『フランク ミュラー』の時計と『シャネル』のコスチュームパールネックレス

「自分を高めてくれるものが欲しくて、33歳のときに『フランク ミュラー』の時計を購入しました。『ロエベ』のバッグ同様、休止期間がありましたが、これも最近またつけるようになったものの1つです。『シャネル』のパールネックレスも、断然今の方が似合います。Tシャツにパールを合わせるスタイルが好きです」。

 

 

◆器

「似合うようになったものではありませんが、器にこだわる人は所作がしなやかになると聞いて、少しずつ集めています。この器は、鳥取県にある延興寺窯の山下さんの作品。赤が珍しかったのと、上から見るとハート形というところに惹かれて」。

 

 

<取材協力> 美容エディター・ライター 松本千登世さん
航空会社の客室乗務員、広告代理店勤務、出版社勤務を経てフリーランスに。女優、モデル、美容研究家、ヘア&メイクアップアーティストなどへの取材で得た知識と、独自の感性を通して綴られる美容エッセイに定評があり、多くの女性誌で連載を担当する。著書に『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。今日も「綺麗」を、ひとつ。』、『もう一度大人磨き 綺麗を開く毎日のレッスン76』(ともに講談社)などがある。

 

 

 

Photo:Kozue Hanada
Text:Junko Yamazaki